Bさん(83歳)は、夫が亡くなり、相続税の申告をすることになりました。
生前、夫は2人の子供とその孫たち3人の合計5名に対し、贈与税の基礎控除の範囲内であれば、贈与税が課税されない、ということを雑誌で読み、毎年それぞれ100万円ずつ贈与を続けていました。7年間みんなに贈与した後に相続が発生し、現在に至ります。
亡夫は、相続人が相続開始前3年以内に贈与された財産の合計額は、相続財産に加算した上で相続税を計算するということを知っていましたので、相続人には該当しない孫たちへの相続開始前3年以内の贈与について、相続税は関係のないはずだと思っていたようです。
申告後、数か月経ってから、税務署の調査官が税務調査ということで自宅に訪問しました、調査官は、過去の資金の贈与について細かく質問をした後、「資金移転された預貯金は贈与財産と認めません。」という話を切り出しました。
実は、子供と孫に名義変更した預貯金は、子供と孫のいざという時のために、本人たちには伝えず、すべて夫が自分で手元に持っていたのです。
調査官に話を聞いてみると、「贈与は受け取った人が自分で管理できるようになっていなくてはならない。」とのこと、7年間100万円ずつ5人への預貯金3500万円は、子供の分も孫の分もすべて家族名義預金として、全額修正申告の対象になってしまいました。
生前贈与は、基礎控除の金額だけにとらわれて、その贈与が成り立つ他の条件について、おろそかにしがちです。生前贈与がきちんと認められるためには、預金から預金へ記録が残るようにしておくことはもとより、受け取った人が自分で管理していること、が非常に重要です。少し贈与税が課税されても、税務署へ贈与税の申告書をきちんと提出することで、贈与の証拠として備えることも可能です。相続は、専門家との十分なお打合せにより、予想される相続税対策のみならず、税務調査を見越した生前対策が必要です。
生前贈与をご検討の方は、一度ご相談いただくことをお勧めいたします。