Dさん(78歳)は、普段から相続のセミナーなどに参加し、相続に関して熱心に勉強をしていた。
興味の対象は、残された家族のために、いかに相続税を安くするかというでした。
そんなDさんは、セミナー講師などの薦めもあり、相続対策は借入金を利用した賃貸物件の建設が一番良いと考え、各所に働きかけ、計画的に賃貸住宅建設を進めていきました。ただ、具体的に相続税がいくら発生するのかなどについて、きちんと税理士に相談したことはありませんでした。
そんなある日、Dさんは胸に急激な痛みを覚えて自宅で倒れ、救急車で病院に運ばれます。
集中治療室に入り、医師・妻・そして子供たちの看病もむなしく、Dさんはお亡くなりになってしまいました。
Dさんは生前、相続税のことは気になっていたものの、遺言書は作成しておらず、簡単なメモがあるのみで、遺言書としての効力があるものは残っていませんでした。
いざ、長男が税理士に相続の相談をし、財産を確認してみると、万が一のために保有していた売却用の駐車場の敷地が、亡きDさんが生前に建設した賃貸住宅のための借入金の担保になっていることがわかりました。
駐車場を売却するためには、借入金を一括返済しなければならず、多くの借入金を抱えた状況で、余裕資金を作ることが非常に困難となりました。そして相続税の納税資金が今後の銀行返済も脅かすことになっていたことに気が付きませんでした。遺産分割はもとより、相続税の納税負担が家族に大きくのしかかることになってしまいました。
生前対策で、実行の効果を確認なさらずに、あわてて実施されることがあるかもしれません。
そのまま相続が開始して、遺産分割も相続税の納税も難しくなってしまった、という結果にもなりかねません。
こんな事態を避けるために、生前対策などは専門家に相談しながら、事前財産診断・財産管理を行って、現状・将来を見越した対策を行うべきかと思います。
セミナーや銀行の営業担当者からの話を鵜呑みにせず、行動を起こす前に必ず我々専門家へご相談ください。