相続は私たち専門家を除くと、一般的にはあまり身近なものではありません。
また何度も経験する方も僅かだと思います。また法律も多岐に渡りますし、規定の提出書類なども多く、財産の形態・評価額・相続人なども各々で異なることもあり、その分け方は複雑でなかなか一般の方にはわかりにくいものです。
財産の分け方には大きく3つに分けられますので、下記より該当する事項を確認してみてください。
財産の分け方 ※下記1~3には優先順位があります。優先順位についてはこちら
遺言書がない場合は、相続が発生した際、どなたがどの財産を承継するかの話し合い(遺産分割協議)を行い、後日相続人(配偶者や子供など財産を受け継ぐ権利がある人)の間でトラブルが生じないようその内容を記載した書面(遺産分割協議書)を作成します。
「遺産分割協議書」にはその協議内容の他、相続人全員の合意、自筆の署名と印鑑登録された実印での捺印が必要です。
相続人の一部を除外してなされた分割協議は無効になります。
相続人に未成年者がいる場合は、家庭裁判所で特別代理人の選任を受けた代理人が協議を行います。遺産分割協議書における遺産分割の内容は自由ですが、遺書がある場合のように法律で定められた分割割合に規則はなく、合意があれば「複数の相続人がいる場合でも、全ての財産を1人が相続する」という分割方法も可能です。
もちろん、下記3、の法定相続分を参考に協議が進められることも多くあります。
それら書類を、不動産であれば法務局、預貯金であれば金融機関の窓口、有価証券であれば証券会社の窓口に提示し、それぞれ手続きをすることになります。
なお、不動産の相続登記や相続税の申告、銀行預金の解約手続き等にも遺産分割協議書が必要になります。
原則は遺言書の記載に従った相続がされます。
被相続人は、財産を遺言によって自由に処分することが可能で、遺産分割の内容は自由です。上記1と同様、「複数の相続人がいる場合でも全ての財産を1人が相続する」というような相続・遺産分割も可能ですが、遺言書に記載の内容があまりに不公平な内容であったり、被相続人が遺族以外に財産を譲る遺言書がある場合などでは、相続・遺産分割が終わった後、不満のある相続人から訴えられることがあります。
法律では、相続人に相続・遺産分割で最低限これだけはもらえる「遺留分」というものが認められているからです。遺留分が認められるのは、配偶者、子またはその代襲相続人、直系尊属で、兄弟姉妹には認められません。遺留分が侵害された時は、相手方に財産の取り戻しを請求することができます。これを「遺留分減殺請求」といいます。
減殺請求は、相続開始および侵害されていることを知ってから1年以内に、遺留分を侵害している相手方に請求しなければ、その権利はなくなります。(手続き内容と期限についてはこちら)遺留分の額は以下の通りです。
妻または夫が相続財産の1/4、
子が相続財産の1/4を等分
妻または夫が相続財産の1/3、
親が相続財産の1/6を等分
妻・夫が相続財産の1/2、兄弟姉妹に遺留分はなし
妻・夫が相続財産の1/2
子が相続財産の1/2を等分
親が相続財産の1/3を等分
兄弟姉妹に遺留分はなし
遺産分割協議がまとまらず、また遺言書もない場合は、家庭裁判所へ調停又は審判を申し立てます。この場合、基礎になるのが法定相続分という、民法で決められた相続・遺産分割の分け方です。
相続財産が、預貯金などの金融資産のみであれば分割しやすいのですが、不動産などのように、一部の相続人が単独で相続しようとすると、他の相続人へ法定相続分で分割ができない財産がある場合、どのように調整するかが問題となります。遺産分割完了までに数年かかることもあるのです。
妻または夫が相続財産の1/2、子が相続財産の1/2を等分
妻・夫が相続財産の2/3、親が相続財産の1/3を等分
妻・夫が相続財産の3/4、兄弟姉妹が相続財産の1/4を等分
子が相続財産を等分
親が相続財産を等分
兄弟姉妹が相続財産を等分
さて、財産の分け方についてご説明いたしましたが、上記の財産の3つの分け方には実は、優先順位があります。
その優先順位は下記の通りです。優先順位を無視した財産分割を行っても無効となります。
相続・遺産分割協議書がある場合は、遺産分割協議書の通りに相続・遺産分割がなされ、遺言書や法定相続分は無視されます。 |
相続・遺産分割協議書はなく、遺言書がある場合は、遺言書の通りに相続・遺産分割がなされ、法定相続分は無視されます。(遺留分減殺請求の可能性はアリ) |
遺産分割協議も不調で遺言書もない場合には、法定相続分を基礎に家庭裁判所において調停・審判がなされます。 |