相続の手続きには期限があるものがあります。 とは言いましても、相続対策01「相続はいくら?」でご説明したようなケースに該当する場合は、相続税の支払い義務があり、申告期限が決まっておりますので、原則全てのものに期限があると考えておく方が無難です。 以下では、一般的な手続き事項の内容とその期限について、相続発生からの時系列に沿ってご説明いたします。
相続放棄とは、相続人(配偶者や子供など財産を受け継ぐ権利がある人)が被相続人(亡くなった人。財産や権利義務のもとの所有者)の財産及び債務について一切の財産を受け入れないことをいいます。
例えば、被相続人の負の財産である債務が正の財産よりも多い場合に「相続放棄」をすることによって負担を免れることができます。この意思表示は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述することが必要になります。
相続では、被相続人の財産をすべて承継することを「単純承認」といいい、これに対し、正の財産の範囲内で負の財産を承継することを「限定承認」といいます。この「限定承認」は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に相続人全員で家庭裁判所に申述する必要があります。
通常、事業所得や不動産所得などの所得税の確定申告が必要な人は翌年3月15日までに前年分の所得の確定申告を行いますが、個人が死亡した場合の手続き期限は、その年の1月1日から死亡の日までの期間の所得について相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に確定申告(準確定申告といいます)をしなければなりません。
この申告は相続人全員が連名で納税者となり、被相続人の所得申告を行う義務があります。
※以下は一般的に確定申告(準確定申告)が必要な人です。
■生前に個人事業を営んでいた
■生前に不動産を賃貸していた
■生前に不動産を売却した
■生前に給与所得や役員報酬を受け取っていた
尚、本来は申告の義務はありませんが、多額の医療費があるために申告した方が有利である(還付を受けられる)という場合は、この準確定申告を行わなければ“損”になります。
被相続人の遺産に対して相続税が発生する場合には、相続人全員が相続税の申告・納税について相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。 遺産分割協議が整わなかった場合(未分割)でも、相続税が発生するときは、相続人全員で申告しなければなりませんし、未分割の場合には適用を受けられない相続税の特例(配偶者の税額軽減、小規模宅地の評価減など)があります。よって、遺産分割協議は申告期限(10ヶ月)までに相続人の間で整っていると納税額が抑えられます。
相続税は未分割の場合を除き、相続人1人1人が実際に取得した財産に対して算出されます。 相続税を現金納付する場合には10ヶ月以内に納税しなければなりませんが、その他の納税方法の延納や物納も申告期限(10ヶ月)までに申請書を提出しなければなりません。
民法では、法定相続人が必ず相続することができるとされている最低限の相続分(=遺留分)が保証されています。
万一、遺言によって遺留分未満の財産しかもらえなかったときには、遺留分を侵した相手に対して1年以内に「遺留分の減殺(げんさい)請求」を行うことで、これを取り戻すことができます。
※遺留分の割合
通常の場合・・・・・・・・・・・遺留分は被相続人の財産の1/2
相続人が直系尊属のみの場合・・・遺留分は被相続人の財産の1/3
民法の規定により、被相続人(亡くなった人)が所有していた財産を相続する権利がある人をいいます。
「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価減」「特定事業用資産の特例」など、相続税の軽減が特例で認められる場合があります。その適用は、遺産分割協議(相続人間での相続内容を決める話し合い)が整っていることが要件となっています。
申告期限(10ヶ月)までに協議が整っていない場合には、適用ができない内容の申告となります。
期限内申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」の添付をすることにより、その後、3年以内に協議が整えば、その時に特例を適用する申告内容に訂正することができます。
相続財産を譲渡した場合の所得税の譲渡の特例(取得費加算)は、その譲渡が相続税の申告期限から3年以内に行われたときだけに限られています。
※一般的な相続で考えられる手続きとその期限の一部です。手続き内容とその期限についての詳細は必ずご相談ください。