プラスの財産とマイナスの財産
相続財産にはプラスの財産とマイナスの財産があり、プラスの財産には不動産、現金、預貯金、有価証券などがあります。マイナスの財産には、債務として借入金、未払金などが含まれます。銀行からの借入金残額、税金の未払い、医療費の未払いの他、不動産の賃貸をされていた方の場合、賃貸借契約書に表示されている預り敷金・預り保証金も債務となります。
相続税法では、さらにプラスの財産から、葬儀費用をマイナスすることを認めています。
葬儀費用には、お通夜、告別式に係る通常の費用が含まれますが、初七日・四十九日の法要費用は含まれません。
また、お布施、お手伝いの方や運転手の方への心づけは通常領収書がもらえないことが多いのですが、葬儀費用として認められるので、支払金額を控えておくことをお勧めします。
なお、香典は収入にならない一方、香典返し費用は葬儀費用に含まれませんので注意が必要です。
さて、上記で「課税価格(プラスの財産-マイナスの財産-葬儀費用)」がプラスになった場合でも、必ず相続税がかかる訳ではありません。
相続する財産が一定額を超えた場合に初めて相続税が発生します。
この相続税がかからない一定額のことを「基礎控除額」といいます。
相続税法では、基礎控除の額が、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」となっています。
つまり、この範囲でしたら相続税が発生しません。(※詳細は、必ず税理士にご確認ください。)
「課税遺産総額」がプラスになる場合には、相続税の申告をする義務が生じます。
仮に、ご遺族が配偶者とご子息2名で合計3名の場合、5,000万円+1,000万円×3名=8,000万円が基礎控除となります。
この場合、ご遺産の課税価格を20,000万円とした場合、20,000万円-8,000万円(基礎控除)=12,000万円(課税遺産総額)となり、この12,000万円に対して相続税額を計算することになります。
上記の例を図解してみます。
【課税遺産総額】 ①-(②+③+④+⑤)
2億円-(5,000万円+1,000万円×3)= ⑥12,000万円
【各自の法定相続分】
配偶者は課税遺産総額の1/2
◆12,000万円×1/2= 6,000万円(⑦)
子は課税遺産総額の1/2、更に兄弟で均等割
◆12,000万円×1/2×1/2= 各3,000万円(⑧)
上記が各相続人(配偶者や子供など財産を受け継ぐ権利がある人)の法定相続分となります。
上記の図の通り、遺産の総額から、課税対象とならない基礎控除額を差し引いた額のことを指します。この部分に対して相続税が課税されます。
課税価格(基礎控除後) |
税率 |
控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超3億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円超 | 50% | 4,700万円 |
STEP1で法定相続分を算出いたしましたので、ここから相続税を計算します。
右上の表1をご覧いただきながら、下記の通りに計算いたします。(表1は速算表です。あくまで参考としてご覧ください。)
6,000万円(⑦)×税率30%-控除額700万円
= 1,100万円
子1人分 3,000万円(⑧)×税率20%-控除額200万円
= 400万円
STEP1で算出した各自の法定相続分を確認してください。
例えば、配偶者の場合、法定相続額は6,000万円ですので、右上表1の取得金額は上から4段目の「5000万円超1億円以下」に該当します。この列の税率は30%、更に控除額は700万円ですので、法定相続額6,000万円に税率30%を乗算し、控除額700万円を差し引いた額が納税額となります。
ここまでで各相続人の納税額が計算できましたので、納税総額はそれを足し算するのみとなります。
なお、分割協議が完了することによって、配偶者が受けることができる特例があります。配偶者が総遺産の1/2(または総遺産の1億6,000万円)まで取得することで、税額が軽減されるのです。(配偶者の税額軽減)
いかがでしょうか。
上記は概算での相続税額の計算の一例をご紹介したものです。ご遺産は現金の他、土地などのようにすぐに評価額が算定できないものがあり、控除やその条件も多岐に渡ります。また上記には実費で発生する費用や、税理士報酬などは加味しておりませんので、あくまで参考までにご覧いただき、詳細は必ずご相談の上ご確認ください。
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